色彩は、どこにでもあふれています。自然界に、街中に、店内に、オンラインに。
あまりに当然のことなので、普段はそれほど意識することはありません。テレビで白黒映画を目にした時などに、改めてその存在に気づくのです。
そして、色とりどりの世界がいかに素晴らしいかを思い出します。
デザインスキルの向上につなげるかどうかは別として、ただ色彩の世界を楽しむためにも、ぜひ色彩理論について知っておきたいものです。
さあ、色彩の世界に飛び込んでみましょう!
1. 厳密には、色彩は存在しない
そんなバカな、と思われるかもしれませんが、事実です。
色彩は、私たちの脳が、外界から受ける光のシグナルの意味を理解しようと努めた時、初めて作られます。つまり、色彩はあなたの頭の中の産物なのです。

色彩を奪われたら、おそらくこの世界は『マトリックス』の1シーンのように見えるでしょう。
その脳の働きなしでは、世界は様々な強度や波長の電磁放射線に覆われた、単色の場所でしかありません。物理学にでも熱中していない限り、全く楽しみがないでしょう。
どうですか? 目と脳のカラフルで密接なつながりを祝うための、“国民の祝日”があってもよいほどですね。
2. 人間は3色型色覚である
RGBカラーモデルがシリコンバレーで最近発見されたものだと思っている方は、3世紀遅れています。
3色型色覚理論(ご存知のとおり、私たちが色彩を、赤色、緑色、青色のチャネルを通して見ているとする理論)は、17世紀にトマス・ヤングが提唱したのが始まりです。彼は当時、頭がおかしいと言われたに違いありません。
網膜内にある赤、緑、青の受容細胞によって私たちは色を見ることができます。
結果的に、科学が彼の理論を証明しました。私たちに色彩が見えるのは、網膜の中に別個のタイプの受容細胞があり、それぞれが、異なる光の特性、具体的には赤色、緑色そして青色を感じ取るからだということが分かったのです。
科学者はこの理論とその他の実験から、人間は約1,000万色を見分けることができると推定しています。
そんなに?と思った方は、比較すれば人間などほぼ盲目と言えるほどの生物がいると知れば、さらに驚くでしょう。例えば、マガモの網膜には5タイプの色覚受容細胞があります。さほど多くないように聞こえるかもしれませんが、それによって人間の170パーセント近くもの色を見ることができるのです!マガモは新しいX-メンだと言えるかもしれません。
3. 色彩を作り出す2つの方法
人類は何でもいじり回すのが大好きで、色も例外ではありません。
色彩理論の探求を通じて、色の作成方法は2つあることが分かりました。光を混ぜ合わせること(加算)、あるいは紙の上で絵の具を混ぜ合わせること(減算)です。
光の混合、または加算モデルは、おそらく最も直感的な方法でしょう。赤色、緑色、青色の光源を様々な強度で混ぜることによって色を作ることができます。光を足せば足すほど、その色は明るくなります。この混合のプロセスが「加算」と呼ばれる所以です。
本質的にこれは、私たちが物理的に色彩を感知し、RGBのコンピュータモデルによる混合色に慣れるのと同じことです。

色彩は光源か、紙の上の絵の具を混ぜ合わせて作られます。
しかし、ほんの数十年前は、今でも美術学校で教えられている減算混合が標準でした。この場合、「減算」とは単純に、色を足すことで紙の上から光を引き算することです。理論的ですね。
昔から、減算プロセスで使われる原色は、赤色、黄色、青色でした。画家があらゆる色調を得るために混ぜ合わせる3色です。しかし、印刷技術が発展するにつれ、原色はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)にとって変わられました。これらの色の組み合わせによって、プリンタはより多くの色を紙の上に描き出すことができるようになったのです。
加算と減算のカラーモデルは、同じコインの裏と表のようなものだと言えます。つまり、これらの2つのカラーモデルの違いは、色を作るための方法の違いだけに過ぎません。
4. 目に見える色すべてを再現できるデバイスはない
「目に見えるすべての色空間を再現できるデバイスを作るというゴールは、カラーディスプレイと印刷プロセスの技術において、いまだに達成されていない」
これは、この問題に関するWikipediaの説明です。これまでスクリーン上の色と紙の上の色を合わせようと苦労した経験がある方なら、この説明を読んで何か言いたいことがあるかもしれません。
技術的に言うと、すべてのデバイスと印刷プロセスは、それぞれの色域(色を再現するための色のセット)を持っています。

コンピュータスクリーン上(RGB)と一般的なプリンタ(CMYK)で見た同じ写真。プリンタは高い彩度を再現できないので、2つの色が完璧に合うことは決してありません。
つまり、使っている機械によって、あなたの色の選択肢は限られてしまうということです。
RGBスクリーン上なら、非常に彩度の高い濃い色を混ぜ合わせることができます。しかし、そうして出来上がった画像をプリンタで印刷する場合、表現できる色はCMYKの範囲内に限られてしまいます。また、美しいパントンカラーで印刷されたパンフレットがあったとして、スクリーン上に同じものを見つけることは決してできないでしょう。パントンカラーはRGBモニタでは再現できないからです。
デバイスが違えば、色も違う、これが現実です。完全に色を合わせることは不可能ですが、基本的なカラーマネジメントでできる対応策はたくさんあります。
5. カラーモデルを使って色彩を表す
「ティールブルー」、「フューシャピンク」は、セーターの色を指す場合には便利な言葉ですが、私たちが日々使う何百万もの色を名前で呼ぶのはとても合理的ではありません。
そのため、色を表す際に役立つカラーモデルや基準が発明されたのです。

PhotoshopのHSBカラーモデルを使うと、より簡単に色を扱うことができます。なるべく直感的に作業することができるよう開発されたカラーモデルだからです。
HSBカラーモデル(もしくはHSL / HSV)
このカラーモデルはRGBをベースにしていますが、アーティストやデザイナーが使うのに、より適しています。色は色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Brightness)の値で表されるので、素早く直感的に色を選び取ることができるからです。
例えばHSBカラーモデルでは、オレンジ色を明るくしたり暗くしたりしたければ、明度のスライダーのみを調整すればいいのです。一方、RGBカラーモデルで暗めのトーンにしたい場合は、すべてのスライダーを動かし、どこでストップすればいいか分からないまま色を探さなくてはなりません。
CMYKカラーモデル
印刷に使われる、標準的な減算的カラーモデルです。それぞれの色は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクの、0から100パーセントの値で表されます。
色相環の利用は、色について考える最高の方法(今のところ)
最初にアイザック・ニュートンが発明し、後に数えきれない人々によって改良された色相環は、原色の混合がどのように別の色相を作り出すかを表しています。

左:伝統的な(ニュートンが発明した)色相環は、3原色を混ぜ合わせて作った12の色相で構成されています。
右:同じ原則を基にした、コンピュータで作られた美しい色相環。
色相環は次の色で構成されています。
- 原色:典型的な赤色、黄色、青色
- 二次色:原色を混合して出来る緑色、オレンジ色、紫色
- 三次色:原色や二次色を混合して出来るさらに別の色相。2つの色名で表されることが多い。青緑色、赤紫色、黄橙色など。
なぜ色相環が役立つのでしょうか?
色がお互いどのような関係にあるか、どの組み合わせが一番いいかを即座に把握することができるからです。
7. 色は調和である
素晴らしいデザインに出会い、その美しい色に魅せられたことは幾度あったでしょう。きっとどのデザイナーたちも、色彩調和の法則の1つを用いていたのではないでしょうか。

色の調和は、類似配色、2色配色、3色配色などの、あらかじめ決まった体系に沿って色相環から色を選ぶことで得られます。これらの組み合わせは誰の目にも、バランスがとれた自然で心地よい色として映ります。まるで、音楽のハーモニーのようだと言えるでしょう。
また、デジタル技術の利点を取り入れ、Color Scheme Designerなどの、カラースキームを設計できるインタラクティブなツールを使うことも必要です。
明確な色彩理論
色彩理論とは、色がどのように機能するかを説くものです。色彩理論への理解を深めるほど、よいデザイナーになれます。
どんな些細な知識も大事ですが、中でも特に重要なのは次の3つです。加算、減算混合の機能を理解すること、色域を理解すること(デバイスの色の範囲には要注意)、そして色相環を使いこなし、色彩調和に気を配ること。
この3つの知識さえあれば、どんな色の問題にも対処できる方法を身につけられます。そうなれば、あなたはデザイン業界において、数少ない真の専門家になれることでしょう。
色彩理論についての質問があれば、ぜひお寄せください。
Header photo: Rocco Lucia (via Flickr)