グラフィックデザイナーが見ておくべき12本のドキュメンタリーフィルム

shunichi shiga

ここに集めたドキュメンタリーフィルムは、グラフィックデザイナーやアーティストにとって大きな礎となり、そして新たなインスピレーションを与えてくれるような作品ばかりです。ストリートアートから工業デザイン、タイポグラフィまで、あらゆる創作物を扱った映像を取り上げていますが、どれを見ても、想像力の源となることは間違いありません。それでは見ていきましょう:

1.『ヘルベチカ』

世界中で最も広く使用されている書体についてのドキュメンタリー:『ヘルベチカ』。ゲイリー・ハストウィット監督によって製作されたこの映像では、ヘルベチカの歴史や普及した理由、普遍的な魅力を称えています。このフィルムではさらに、タイポグラフィやグラフィックデザインが、私たちの文化にどのように影響しているのかを検証しています。映像全編はNetflix(ネットフリックス)でご覧いただけるほか(日本では未配信)、公式サイトから購入することもできます。

2.『オブジェクティファイド(Objectified)』

同じくゲイリー・ハストウィット監督の作品で、製品やそれをデザインした人々と消費者の関係についてのドキュメンタリーです。この映画は、デザインプロセスや、次々と映し出される魅力的な工業デザインへの美しいトリビュートとなっており、製品(そしてそれらのデザイナー)が私たちの生活にどれほど影響を及ぼしているかを検証しています。映画全編はNetflix(ネットフリックス)(日本では未配信)または Vimeoでご覧いただけます。

3.『なぜ人間は想像するのか』

伝説的デザイナー、ソール・バスによるこの25分間のショートフィルムは、ある意味ドキュメンタリーであり、ある意味アニメ化されたタイトルバックでもあります。このクラシックな作品は、創造の本質と創造的プロセスについて、また、その2つに対する異なるアプローチについて語っています。このフィルムは1968年に製作されたにもかかわらず、現代においても想像力を掻き立てるものであり、魅力あふれる画像は、音を消した状態で見ても印象的です。こちらで全編をご堪能ください!

4.ヒルマン・カーティスによる『アーティスト・シリーズ』

このビデオシリーズでは、ヒルマン・カーティスが現代における数々のトップデザイナーやデザイン会社に、その仕事についてインタビューをしています。ここでご紹介するのは、有名な“グランジ・タイポグラファー”、デイビッド・カーソンについてのフィルムです。彼はデザインのあらゆるルールを破り、1990年代でも屈指の影響力のあるグラフィックデザイナーになりました。インタビューを行ったその他の著名人や会社は、ポーラ・シェア、ステファン・サグマイスター、マルコム・グラッドウェル、ミルトン・グレイザー、そして伝説的なデザイン会社「Pentagram」です。すべてのシリーズはカーティスの公式サイトから無料でご覧いただけます。

5.『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』

伝説的なグラフィティ・アーティスト、バンクシーによって製作されたドキュメンタリー。ロサンゼルスのリサイクルショップオーナー、ティエリー・グエッタが、ストリートアートのドキュメンタリー作家からストリートアーティストになり、そして有名なポップアーティストになるまでの非凡な道のりを描いた作品です。基本的にはストリートアートに関するフィルムですが、デザイナーなら誰でも、この映画がアート業界の主観的性質をからかう様子を楽しめるでしょう。フィルムには、スペース・インベーダーやシェパード・フェアリー、そしてバンクシー自身の作品も登場し、刺激的で風刺に富んだ興味深い映画になっています。まさに、彼の最も象徴的な作品と言えるでしょう。Netflix(ネットフリックス)でご覧ください(日本では未配信)。

6.『ディープ・ダイブ』:IDEO

ABCのニュース番組『ナイトライン』が製作した、世界でもトップクラスのデザイン会社、IDEOの製品デザインプロセスについての映像です。このシリーズでは、IDEOのチームが質素なショッピングカートのデザインを変更しようとしています。この映像は1990年代のものですが、世界最大級のデザイン会社のデザインプロセスを誰もが垣間見ることのできる珍しい映像ですので、必見の作品です。残りのシリーズはこちらからご覧ください。

7.『アート&コピー』

こちらはアメリカの広告業界についての映画で、“Just do it”や“Think different”、“Got Milk?”などのアイコン的キャンペーンのデザインに参入するプロセスを紹介しています。これらのキャンペーンの裏側について広告の製作者にインタビューを行い、彼らがどこでインスピレーションを受けたのか、彼らのメッセージで多くの人をどのように感動させたのかを解明します。商業やアート、そして人間の心理を興味深く掘り下げた作品になっています。Netflix(日本では未配信)及びVimeoでご覧いただけます。

8.『ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ』

象徴的なインダストリアル・デザイン・デュオ、チャールズ&レイ・イームズ夫妻をテーマにしたドキュメンタリーです。二人は家具のデザインで最もよく知られていますが、この映画では彼らのアート作品や建築、写真、映像にもフォーカスしています。このフィルムは、二人の魅力、結婚生活、作品、そしてアメリカの文化における大きな影響を、親しみのこもった視点で捕えています。

今日に至るまで、イームズのすべての製品は、ほとんどのデザイン分野の人々から、宗教的とも言える畏敬の念を持って見られています。ナレーターを務めるのはジェームズ・フランコで、PBSでご覧いただけるほか、Netflixからもレンタルできます(日本では視聴・レンタルともに不可)。

9.『ロゴラマ』

すべてのロゴデザイナーの皆さんに向けた作品です。約15分間の短編アニメーションフィルムで、文字通りすべてのもの、すべての人物がロゴで描かれており、殺人鬼と化したドナルド・マクドナルドが銃乱射事件を起こすディストピア・ロサンゼルスが舞台になっています。フランスのアニメーション・スタジオH5が製作し、2009年のアカデミー短編アニメ賞を受賞しました。こちらで全編通してご覧いただけます。

10.『バウハウス:20世紀の顔』

もしあなたが何かをデザインしたことがあるなら、「デザインを学ぶ者は、単に教育を受けるだけでなく、業界で仕事をするために訓練されるべきだ」という彼らの歴史に形作られた哲学に影響されているのです。こちらの映像は抜粋されたものですが、Amazonで購入すれば全編がご覧になれます。

11.ミルトン・グレイザー:『To inform and delight』

この素晴らしい作品は、象徴的な“I Love NY”のキャンペーンをデザインしたことで有名な、20世紀に比類なき伝説的デザイナー、ミルトン・グレイザーについての映像です。この映画には、例えば、「アートの目的は情報を伝えることと、楽しませることだ」などのたくさんの心に響く引用文が使われています。このフィルムを見れば、きっとグラフィックデザイナーになると決断するのに十分な理由が見つかることでしょう。こちらもNetflixでご覧いただけます(日本では未配信)。

12. PressPausePlay

最後にご紹介するのは、すべてのクリエイティブな人々のためのスローガンです。デジタル技術の民主化が、どれほどアーティストや創造者に無限のチャンスやたくさんの新たな課題を与えてきたかについての映像です。Moby、ショーン・パーカー、レナ・ダナム、ロビン他、現代のあらゆる業界の著名なアーティストにインタビューを行っており、まさにすべてのクリエイティブな人々にインスピレーションを与え、行動を起こさせるきっかけとなっています。映画全編はVimeoでご覧いただけます。

他にお勧めのデザイン・ドキュメンタリーはありますか?コメント欄でお聞かせください!

関連記事

ポルカドット:アート、宇宙、そしてグラフィックデザイン

ポルカドット:アート、宇宙、そしてグラフィックデザイン

ポルカドット。宇宙そのものが身に着けている唯一の装飾モチーフとして、私たちはポルカドットをかなり本格的に紹介する価値があると考えています。 実際、ポルカドットは、私たちが想像する以上に歴史が深いです。19世紀半ば、英国でメンズファッションの世界で初めて流行してから、ポルカドットは(ちなみに、ポルカダンスとの関係性は証明されていません。フラメンコとの関係は証明されています)現代美術の歴史の中で、思いのほか重要な位置を占めるようになりました。 ESA/Hubbleより ポスト印象派の画家、ジョルジュ・スーラが描いた作品から、物議をかもす現代美術アーティスト、ダミアン・ハーストの何百万ドルもする作品まで、ポルカドットを用いた数多くのすばらしい作品について見ていきましょう。 そして、グラフィックデザインに関してはどうでしょうか?もちろん、見事なロゴ、商品パッケージ、そしてその他にもポルカドット模様のものがたくさんありますが、ドットはそれ以上にもっと深いところにまで及んでいます。 (左)元英国首相のウィンストン・チャーチル、勝利の水玉の蝶ネクタイを着こなしている(右)フラメンコダンサー 今までもしDPI(dots per inch;ドット毎インチ)やPPI(pixels per inch;ピクセル毎インチ)の用語について考えたことがあれば、印刷とデジタル両方のデザインされた画像はドットの集まりによって構成されていることを知っているでしょう。その通りです。ここではまずビッグ・バンから取り上げ、そしてコンピューターモニタとインクジェットプリンタの内部構造にクローズアップしていくつもりです。それでは早速見ていきましょう。 アートの中のポルカドット — 点描画法 ジョルジュ・スーラと彼が点描画法で描いた絵画作品のひとつ「サーカスの客寄せ」(1889)の細部 19世紀後半、印象派に続き、点描画法は目に見える筆のタッチをさらに押し進めるという急進的な実践に取り組みました。たくさんの小さなドットからなる絵を描き始めたのです。(実際、現代のプリンタの仕組みにかなりよく似ています) フランス人画家、ジョルジュ・スーラによって擁護されたこの技法は、色彩理論の仮説から来ています。すなわち、たくさんの異なった、かつ補色カラーのドットをそれぞれ隣り合わせに置くと、(CMYKプリントで起こるように)人間の目ではそれらが中間色調に溶けこんで見えます。しかし、実際に絵画で実践してみると、これはうまくいきませんでしたが、それでも出来上がった作品は目をみはるものでした。 ジョルジュ・スーラの代表作「グランジャット島の日曜日の午後」(1884) ベンデイドット ロイ・リキテンスタインとベンデイに影響を受けた作品「Forms In Space」(1985) 1950年代コミックブックは色のスペクトルを成し遂げるために、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのわずか4つの印刷プロセスカラーを使用するという安上がりな方法を採用しました。イラストレーターのBenjamin Henry Day, Jr.にちなんで名付けられた “ベンデイ”方法はドットを異なった感覚で重ね合わせ(もしくは配置して)、新しい色調の認識を作り出します。たとえば、シアンとイエローを重ねるとグリーンが出来上がり、マゼンタのドットを白いものの上にさらに間隔をあけて置くとピンクという知覚を作り出します。 ポップアーティストのロイ・リキテンスタインはこの方法の技巧を、自身のコミックブック画の象徴的な大型スケールのペイントで明白なものにしました。 ロイ・リキテンスタインの有名な作品「M-Maybe」(1964) このメークアップアーティストはリキテンスタインに影響を受けた驚くべき衣装をうまくまとめている。 インフィニティ・ドット 草間彌生と彼女のインスタレーション「Infinity Dots Mirrored Room」(1996) もしポルカドットのパワーを理解している人がいるなら、それは日本人アーティストの草間彌生です。生涯を通して精神病に苦しみ、東京の精神科の病院で自発的に暮らしているこのアーティストは、作品を作るという精神的なセラピー治療の繰り返しがなければ、ずっと昔に自殺していただろうと語っています。彼女のインスタレーションは、ポルカドットの彫像とミラーを使用し、模様が延々と広がっています。その壮大なドットについて、草間彌生はこう語っています。 「ポルカドットは太陽と月を形どっています。太陽は全世界と私たちの生きている人生のエネルギーの象徴です。そして月は、穏やかで、丸く、柔らかく、カラフルで、無意味で、無知の象徴です。ポルカドットはムーブメントになっています・・・インフィニティ(無限の宇宙)への道筋なのです」 草間彌生、「Passing Winter」(2009) ダミアン・ハースト ダミアン・ハーストと1億ドル(約111億円)の価値がある、ダイアモンドをちりばめた頭蓋骨「神の愛のために」(2007) 2億ポンド(約300億円)以上もの資産を有するイギリス人アーティストのダミアン・ハーストは、2012年、ポルカドットの流行に便乗し、300ものドット作品のシリーズを発表しました。これにより、世界で最も裕福な現存アーティストとなりました。チャリン! ダミアン・ハースト、「Myristyl Acetate」(2005) グラフィックデザインとプリント工程へのピクセル — 左:RGBサブピクセル、中央:ピクセルとプリントされたドットに関する図解、右:そして実際にクローズアップされたプリンタのドット画像 ピクセル、ドット、そしてポイント―なんとまあ!これら3つの要素の相互関係はPhotoshopに詳しい人なら知っている“DPI” や “PPI”の分野という形で実質的に明らかとなっているように、その相互関係についてのみ書いたブログが投稿できるほど複雑です。(これについては乞うご期待・・・) 今のところ、あえて言うなら、コンピュータ画面はピクセルの列が縦横並んで構成されており、さらに各ピクセルは加色法の結果として知覚色のスペクトルを生成し、さまざまな組み合わせで光るレッド、グリーン、ブルーのサブピクセルでできています。一方プリンタは1インチあたり300から600の密度で小さなドットとしてインクを噴出しています。 これでわかったでしょうか?根本的には、どんなデザインであっても、ただ何らかのドットが集まっているだけです。ドットを尊敬しましょう!そしてポルカドットを装飾として積極的に使用しましょう。最後にそのすばらしいデザイン例をご覧ください。 リキテンスタインに影響を受けた99designsデザイナーTintoDeVeranoによる見事な名刺 99designsデザイナーBoolaによるロゴデザインでのポルカドット デザイナーKirstie…

書体を知ろう:Futuraの驚くべき過去

書体を知ろう:Futuraの驚くべき過去

書体の選択が、デザインの出来を左右することがあります。それはウェブや印刷物などのページや、文章、単語に当てはまりますし、実際にはたった1文字であっても、書体によって良くも悪くも見えてしまう程です。Comic Sans(コミックサンズ)が嫌いな人々に意見を聞いてみれば分かります。 1世紀以上にわたり、デザイナーたちは書体の重要性を十分に意識してきました。じっくりと考え抜かれたフォルムを持つ数々の書体がたどってきた歴史は、まさに驚きに値します。例えば、Futura(フーツラ)という書体は、“未来”を意味するその名にふさわしく、誕生から90年を経た今でも、変わらずに活用されています。このフォントの作り手たちは制作の課程において、単に「良いデザイン」を目指した訳ではありませんでした。彼らは最大限に効率的な社会、すなわちユートピア(理想郷)の創造を目指していたのです。 この書体にまつわる物語をご紹介しましょう。 26+ Zeichen: Edelsans 1922年、ドイツ人のヤコブ・エアバー教授がGeometric Sans Serif(ジオメトリックサンセリフ)という書体を作り出しました。この書体は、多大な影響力を誇るデザイン学校であるバウハウスの思想に基づき、装飾や特徴的な要素を廃し、純粋に機能性を追求したものです。そのフォルムは、すべての書体の構成要素として最も基本的な、円をベースにしています。そして、読みやすいことこの上なく、書体の本来の機能をしっかりと果たしています。 バウハウスのデザイナーたちは、フォルムと機能が、装飾や乱雑さ、装飾的な過去の再来といったものを一掃した世界を信じていました。その世界においてのみ、社会的平等が真に実現されると彼らは考えていたのです。それはさしずめ、デザインによる理想郷と言ったところでしょう。 Futura light(フーツラ・ライト)、Futura regular(フーツラ・レギュラー)、Futura semibold(フーツラ・セミボールド)の各書体:Paul Renner (Wikipediaより) バウハウスの正式メンバーではありませんが、ドイツ人のパウル・レナ―という書体デザイナーは、バウハウスの教義を信じており、エアバー教授の書体をより良いものにできると考えました。そしてレナ―は1927年に、Futuraを生み出しました。 この書体は、幾何学的形態(ほぼ完全な円、三角形、四角形)を全面的にベースにしたフォルムで、線のウェートとコントラストはほぼ均一です。また、小文字は非常に縦に長く、同じ書体の大文字より高さがあります。Futuraはまるで、効率そのものを体現しているようです。あからさまな「スタイル」の主張はせず、清潔感と統一感があり、読みやすく洗練されています。 フォルクスワーゲン広告:Jeff Minarik (Coroflotより) 『イケア、Futuraに別れを告げる』:idsgn 過去1世紀にわたり、数々のデザイナーや企業はFuturaの魅力を活かして、印象的な効果を生み出してきました。フォルクスワーゲンとイケアは、広告にFuturaのみを使用していますし(ただしイケアが使用していたのは2010年までで、その後Verdanaに変更したことで物議を醸しました)、ドミノ・ピザやアブソルート ウオッカのロゴに使用されている書体にも皆さんはお気付きかもしれません。 映画監督スタンリー・キューブリック(『2001年宇宙の旅』)と、同じく映画監督のウェス・アンダーソン(『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』)は、作品のタイトルやクレジットにFuturaを好んで用いることで知られています。 Futuraの最高の功績と呼べるのは、月への上陸でしょう。1969年に人類初の月面着陸を行ったアポロ11号の一行は、月に残してきた銘板に書かれた文字の書体に、賢明にもフーツラを採用していたのです。 写真:アポロ11号月着陸船「イーグル号」に取り付けられた銘板(idsgnより) これを歴史と呼ばずして、何をそう呼べば良いのでしょう。 あなたの好きな書体は何ですか? 掲載画像:ニック・シャーマン (Flickrより)[ 翻訳:shunichi shiga ]

ユートピアを目指したデ・ステイル造形運動のビジュアル付き歴史概要

ユートピアを目指したデ・ステイル造形運動のビジュアル付き歴史概要

デ・ステイル(De Stijl:オランダ語で「スタイル」の意味)は第一次世界大戦の混沌の中、「秩序への回帰」を掲げて生まれた芸術活動の一つです。 ドイツの芸術家ピエト・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフが中心となり興ったデ・ステイルは、戦前の芸術の装飾的な傾向(アール・ヌーヴォーを思い浮かべて下さい)を否定し、あらゆる対象を幾何学的形式で描くキュビズムを、新たな芸術の性質として提唱しました。最も基本的なデザイン要素である垂直、平行の直線や、原色のみで表現する完全な抽象芸術を目指していました。 デ・ステイルの造形理念は芸術美を持ちながらも社会に大きく影響しました。芸術家自身の個性を表面上から取り除き、精密さや全体的な調和を求めることによって、デ・ステイル派は未来のユートピアへの基盤を築けると考えていました。 全体主義を理念とするデ・ステイルは、社会を立て直すために、いわゆる「高級芸術」や「応用美術(グラフィックや製品のデザインなど)」、そして「建築美術」を区別している間違った定義を撤廃しようとしました。 デ・ステイルは絵画だけでなくデザインや建築の分野にもその性質が反映されています もちろん、現代のロゴやウェブサイトのデザイン分野でも、この性質が見られます(ある意味では、モンドリアンこそがWindowsの初めてのデザイナーと言えるかもしれません)。 デ・ステイルな作品に目を向けると、それらの特徴はすべて、現代のデザイナーが扱い、称賛しているものだということが分かります。ミニマルな単純性や緊張感の表現、対象物と余白スペースのバランス、グリッド(格子状のデザイン)などです。 Microsoftに用いられたグリッドには、デ・ステイルの芸術美の影響が感じられます 英国のデザイン雑誌『Eye』に掲載されたエッセイで著者ジェシカ・ヘルファンドは、デ・ステイルこそ現代のデザイナーが持つプロ特有の危機感に対する答えだと訴えています。それについて言及した部分を抜粋しました。 ― さまざまなものが電子化した現代の環境の中では対人交流が共存し発達しているために、(もし完全に廃れていないと考えるなら)デザインの機能は社会の主流から取り残されていると考える人もいるかもしれない。あるいは、デザイナー自身の役目が消えかけているとも感じるだろうか。おそらく私たちは無意識のうちに、その支配権をコンピュータや作品を見る人、新しいものを求める欲、成長するグローバル社会に委ねてしまったのだ。― しかし、著者はその状況に対する解決策も提示しています。 ― 現代デザイナーにできること、取り組むべきことの核心は、精密さを明確にし、称賛するということだ。それを活用することでデザイナーの役割はより具体化されると同時に重要さを増し、新たなビジュアル定義を構築する者としての使命が再び明確になるだろう。 スクリーン上でクリエイティブな表現を形とすることに苦心しているなら、デ・ステイルの芸術家たちのように、自分の作品を限られた直線的な要素を用いて訴えてみてもよい。私たちは現代のサイバースペースが生み出す無限に広がる空間で、デ・ステイルの直線で示す魅力を伝えることができるのだから。― まだまだ語るべき内容はあるのですが、デザインの歴史に関しては、おそらくビジュアルで順に追っていくのが最良でしょう。そこで、デ・ステイルの想像力豊かな作品や、デ・ステイルにインスパイアされたデザインを用意してみました。 雑誌『デ・ステイル』1号、2号の表紙 映画『インセプション』のオマージュポスター。デ・ステイルの表紙にインスパイアされたデザインです。 テオ・ファン・ドゥースブルフとリチャード・ケグラーのデ・ステイル書体。四角形のジオメトリックなコンセプトが土台となっています。 アムステルダム市立美術館の新しいロゴはとてもミニマルに仕上がっています。完全なデ・ステイルではなく、根本的なデ・ステイルの要素がいくつか含まれています。 こちらの2つもデ・ステイルにインスパイアされたロゴです。建築家ハリス・アームストロングのロゴ、アップルの改訂版ロゴ。 改装したモンドリアンのスタジオ デ・ステイル展示会のポスター デ・ステイルにインスパイアされた3Dデザイン 別の展示会ポスターと、その展示会グッズ オルタナティブ・ロックバンド『ザ・ホワイト・ストライプス』のデ・ステイルを取り入れたアルバムジャケット。アルバムタイトルにも起用しています。 米国オークション会社eBayのロゴデザインを募集した99designsのコンペで、Ruiz Nala wi Garengが提出した作品には目を奪われました。斜線が多いため、デ・ステイルにはなりきっていないものの、色使いや黒のラインがデ・ステイルな印象を与えます。 いかがでしたか?デ・ステイルは現代デザイナーが持つ問いへの答えだと思いますか?最近、デ・ステイルなデザインを見かけたなら、ぜひコメントをしてシェアしてください! アイキャッチ画像:Theo van Doesburg 『Composition Ⅶ(the three graces)』(Wikipediaより)[ 翻訳:shunichi shiga ]

最新のデザインコンペ

デザイナーとしてステップアップできるお仕事をご用意しています。
0%