アール・デコ:グラフィックデザインの力強く印象的な様式

shunichi shiga

あらゆる古典的な様式はやがて再び時流にのる運命にあります。素晴らしいデザイナーはそのことを分かっており、偉大なデザイナーはその仕組みを知っています。 “レトロ”の提唱は恐らく今ほど声高に主張されたことはありません。1920年代の文化(TVドラマ『ダウントン・アビー』や映画『華麗なるギャツビー』)が旋風を巻き起こしている昨今の状況を見ると、私たちは、アール・デコはグラフィックデザイン界で本格的に復活するだろうと考えています。

アール・デコは力強く、そして美しい様式です。ここでは、その歴史と正しい使い方についてご紹介します。

アール・デコ

アール・デコは1925年にパリで初めて作り出された用語で、定義するのは難しい様式です。典型的な特性をリストアップすると、幾何学的な形、太い曲線、力強い垂直の直線、空気力学的な形、モーションライン、エアブラシの使用、そして多くのサンバーストなどがあります。しかし、これが本当にこの様式を十分に表現しているわけではありません。このリストを記憶するだけでは、あなたのデザインはまだアール・デコスピリットが十分ではないかもしれません。

アール・デコを取り入れるには、偉大な歴史的背景を知る必要があるのです。それでは、デコが形成された文化環境である1910年代、20年代、30年代のビジュアルツアーに出発しましょう。

(左から時計回りに)Jean Metzinger作のキュビスト絵画 「Table by a Window」(1917)、Henry Dreyfussのデザイン「20th Century Ltd. locomotive」(1938)、1927年のニューヨークシティのタイムズ・スクエア

1920年代は急速に文化的変化が起こった怒涛の時代でした。輸送技術(車、列車、飛行機)が発達し、高層の建築物が増え、都市は人であふれていました。特にアメリカでは、非常に裕福な時代でもありました。こうした背景の中、目が回るような断片化の思想が生まれます。その思想は、高級感やスピード、パワーに対する執着と結びついた、この時代のキュビストや未来派の作品に見ることができます。

一言で言えば、アール・デコです。

アール・デコ建築

シンガポールのパークビュー・スクエア・ビルの力強い垂直の直線、アール・デコ建築の最盛期に建てられた、ニューヨークシティの有名なクライスラー・ビルのサンバースト状のファサード、そして、ロサンゼルスのハリウッド・ブルバードにあるビルのメタリック装飾がその一例です。

(左から)パークビュー・スクエア・ビル(写真:Razmataz’)、クライスラー・ビルのファサード(写真:François Hogue)、 ハリウッド・ブルバード内のビル(写真:daryl_mitchell

アール・デコ模様

下の写真にあるニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールはひとつの大きなサンバーストとなっています。クライスラー・ビルのエレベーターは幾何学的な形、曲線、メタル装飾、そして垂直の直線、とさまざまなデコが使用されています。入り口の右上のファサードは最もパワフルで・・・ほんの少し派手なデコとなっています。

(左から時計回りで) クライスラー・ビルのエレベーターの内装; アール・デコ調エントランスのファサードラジオシティ・ミュージックホールの内装

アール・デコの小物

下の写真では、建築物や装飾物のモチーフが、デコにインスパイアされたジュエリーや魅惑的なヘッドホンへと様変わりしています。

(左から) デコにインスパイアされた指輪ネックレスヘッドホン

アール・デコのポスター

建築物の次は、グラフィックデザインを見ていきましょう。フランス人デザイナーでグラフィックデザイン界の巨匠、A.M.カッサンドルの作品をご紹介します。

「L’Atlantique」から感じられる船の堂々としたパワー、「Nord Express」やミハエル・クンル作の「Clipper 314」にあるキュビストや未来派のインスピレーション、そして恐らく史上最も有名なアール・デコのポスターである「Pivolo」における平面上の幾何学的なクオリティをご覧ください。

A.M.カッサンドル作「L’Atlantique」;ミハエル・クンル作「Clipper 314

A.M.カッサンドル作「Nord Express」、「Pivolo
下記の映画ポスター、バズ・ラーマンの映画『華麗なるギャツビー』のイメージ画はアール・デコ調のスタイルを前面に押し出しています。

華麗なるギャツビー』(2012)のポスター;Guillermo Bolin作1926年11月雑誌『VOGUE』の表紙

アール・デコのロゴ

今日、アール・デコはロゴデザインの世界でもよく目にします。下の3つのデザインに描かれている垂直性、サンバースト、エアブラシ効果、そして活字書体をご覧ください。

Mel Gardner 作のNautilus Napier hotelのロゴ;GDS作のMiami Aesthetic SurgeryとStone Artのロゴ

当サイト99デザイナーたちのアール・デコ

もちろん、当サイトのデザイナーたちもデコに影響を受けた非常に素晴らしいロゴを作っています。下に挙げたデザインは説明など必要ないくらいアール・デコらしい作品です。

(左)Firekarma作のロゴデザイン; (右) The13thDesign作のロゴデザイン

sterling cooper作のロゴデザイン; dialfredo作のロゴデザイン

tockica作のウェブデザイン

アール・デコのタイポグラフィ

最後になりましたが、アール・デコはタイポグラフィで鮮烈な印象を与えました。A.M.カッサンドルが創作した、細いフィラーラインで装飾された太字をベースとしたBifurのフォントは、まさに見事としか言いようがありません。BroadwayとPeignotもよく使用されているアール・デコ調の書体です。

(左から時計回りで) BifurPeignotBroadway

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ユートピアを目指したデ・ステイル造形運動のビジュアル付き歴史概要

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デ・ステイル(De Stijl:オランダ語で「スタイル」の意味)は第一次世界大戦の混沌の中、「秩序への回帰」を掲げて生まれた芸術活動の一つです。 ドイツの芸術家ピエト・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフが中心となり興ったデ・ステイルは、戦前の芸術の装飾的な傾向(アール・ヌーヴォーを思い浮かべて下さい)を否定し、あらゆる対象を幾何学的形式で描くキュビズムを、新たな芸術の性質として提唱しました。最も基本的なデザイン要素である垂直、平行の直線や、原色のみで表現する完全な抽象芸術を目指していました。 デ・ステイルの造形理念は芸術美を持ちながらも社会に大きく影響しました。芸術家自身の個性を表面上から取り除き、精密さや全体的な調和を求めることによって、デ・ステイル派は未来のユートピアへの基盤を築けると考えていました。 全体主義を理念とするデ・ステイルは、社会を立て直すために、いわゆる「高級芸術」や「応用美術(グラフィックや製品のデザインなど)」、そして「建築美術」を区別している間違った定義を撤廃しようとしました。 デ・ステイルは絵画だけでなくデザインや建築の分野にもその性質が反映されています もちろん、現代のロゴやウェブサイトのデザイン分野でも、この性質が見られます(ある意味では、モンドリアンこそがWindowsの初めてのデザイナーと言えるかもしれません)。 デ・ステイルな作品に目を向けると、それらの特徴はすべて、現代のデザイナーが扱い、称賛しているものだということが分かります。ミニマルな単純性や緊張感の表現、対象物と余白スペースのバランス、グリッド(格子状のデザイン)などです。 Microsoftに用いられたグリッドには、デ・ステイルの芸術美の影響が感じられます 英国のデザイン雑誌『Eye』に掲載されたエッセイで著者ジェシカ・ヘルファンドは、デ・ステイルこそ現代のデザイナーが持つプロ特有の危機感に対する答えだと訴えています。それについて言及した部分を抜粋しました。 ― さまざまなものが電子化した現代の環境の中では対人交流が共存し発達しているために、(もし完全に廃れていないと考えるなら)デザインの機能は社会の主流から取り残されていると考える人もいるかもしれない。あるいは、デザイナー自身の役目が消えかけているとも感じるだろうか。おそらく私たちは無意識のうちに、その支配権をコンピュータや作品を見る人、新しいものを求める欲、成長するグローバル社会に委ねてしまったのだ。― しかし、著者はその状況に対する解決策も提示しています。 ― 現代デザイナーにできること、取り組むべきことの核心は、精密さを明確にし、称賛するということだ。それを活用することでデザイナーの役割はより具体化されると同時に重要さを増し、新たなビジュアル定義を構築する者としての使命が再び明確になるだろう。 スクリーン上でクリエイティブな表現を形とすることに苦心しているなら、デ・ステイルの芸術家たちのように、自分の作品を限られた直線的な要素を用いて訴えてみてもよい。私たちは現代のサイバースペースが生み出す無限に広がる空間で、デ・ステイルの直線で示す魅力を伝えることができるのだから。― まだまだ語るべき内容はあるのですが、デザインの歴史に関しては、おそらくビジュアルで順に追っていくのが最良でしょう。そこで、デ・ステイルの想像力豊かな作品や、デ・ステイルにインスパイアされたデザインを用意してみました。 雑誌『デ・ステイル』1号、2号の表紙 映画『インセプション』のオマージュポスター。デ・ステイルの表紙にインスパイアされたデザインです。 テオ・ファン・ドゥースブルフとリチャード・ケグラーのデ・ステイル書体。四角形のジオメトリックなコンセプトが土台となっています。 アムステルダム市立美術館の新しいロゴはとてもミニマルに仕上がっています。完全なデ・ステイルではなく、根本的なデ・ステイルの要素がいくつか含まれています。 こちらの2つもデ・ステイルにインスパイアされたロゴです。建築家ハリス・アームストロングのロゴ、アップルの改訂版ロゴ。 改装したモンドリアンのスタジオ デ・ステイル展示会のポスター デ・ステイルにインスパイアされた3Dデザイン 別の展示会ポスターと、その展示会グッズ オルタナティブ・ロックバンド『ザ・ホワイト・ストライプス』のデ・ステイルを取り入れたアルバムジャケット。アルバムタイトルにも起用しています。 米国オークション会社eBayのロゴデザインを募集した99designsのコンペで、Ruiz Nala wi Garengが提出した作品には目を奪われました。斜線が多いため、デ・ステイルにはなりきっていないものの、色使いや黒のラインがデ・ステイルな印象を与えます。 いかがでしたか?デ・ステイルは現代デザイナーが持つ問いへの答えだと思いますか?最近、デ・ステイルなデザインを見かけたなら、ぜひコメントをしてシェアしてください! アイキャッチ画像:Theo van Doesburg 『Composition Ⅶ(the three graces)』(Wikipediaより)[ 翻訳:shunichi shiga ]

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