歴史上、最も成功したグラフィック・デザイナーと言えば、ソール・バスかもしれません。彼は、グラフィック・デザインの重要性が著しく増していた20世紀中盤に活躍し、独自の象徴的で余計なものを削ぎ落としたデザインで、驚くほど多くの大企業のブランディングに成功しています。

Bell、クリネックス、AT&T、すべてソール・バスの作品です。もしあなたが、50年もの間、輝きを失わず廃れることなく続いていくデザインを探し求めていたのなら、ソール・バスこそがそれらを作った男でした。

ソール・バスのデザイン。左からBell(1969年)、クリネックス(1980年代)、AT&T(1986年)

ソール・バスが知られているのは、ロゴデザインだけではありません。というよりも実際は、ロゴは彼の芸術的な遺産のほんの一部なのです。それでは、現在まで続く、彼の最も素晴らしいグラフィック・デザインの作品を見てみましょう。

キャリアのスタート

ソール・バスは1920年、ユダヤ系移民の子どもとしてニューヨークに生まれました。創造力にあふれた子どもで、いつも絵を描いていました。アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークの夜間クラスに通い、幸運なことに、機能的で美しいデザインで知られるバウハウスの巨匠・ジョージ・ケペッシュの下で学ぶことになりました。

映画のグラフィック・デザイン

1940年代にソール・バスは、ニューヨークからカリフォルニアに拠点を移しました。広告デザインの仕事をメインとしていた彼は、1954年公開の映画カルメンの仕事で初めてブレイクすることになります。映画の製作会社は、ソール・バスのデザインしたポスターに大変感動し、タイトル・クレジットのデザインも依頼します。これが彼のその後を大きく変えることになるのです。

ソール・バスのデザインしたポスター。左から『或る殺人』(1959年)、『昼下りの情事』(1957年)

ソール・バスのデザインしたポスター。左から『黄金の腕』(1955年)、『めまい』(1958年)

ソール・バスは、不要なものを削ぎ落とした独自のスタイルで、映画ポスターを洗練されたものにレベルアップさせ、タイトル・クレジットの役割に革命を起こしたのです。それまでタイトル・クレジットは単調で面白みのないものでした。その重要性がまったく認められていなかったため、実際にタイトル・クレジットが放映される時には幕が閉まっていて、映画のシーンが始まってから幕が開くということが当たり前だったのです。

しかしソール・バスは、これらのグラフィックに命を吹き込み、他のものと同様に映画を観るという体験の一部として楽しめるようにしたのです。その後、彼のアイコンともなる「キネティック・タイポグラフィ」を初めて導入しました。バスの文字はスクリーン上で大きく躍動し、しばしば文字以外のビジュアルと組み合わせて表現されました。

こうして、タイトルは映画鑑賞の楽しみのひとつになったのです。ソール・バスのデザインしたクレジットが使われたフィルムは、「映写技師の方へ。タイトルの前に幕を開けてください」という注意書きとともに映画館に配給されました。

長く色あせないロゴ

ソール・バスのデザインしたロゴの平均使用年数は、なんと34年です。さらに、コーセー(1959年)や紀文食品(1964年)、Warner Communications(1972年)、Girl Scouts(1978年制作、2010年にマイナーチェンジ)、そしてGeffen Records(1980年)のように、彼のデザインがいまだに使われているケースもあります。堅実で思慮深く、時代を超えるデザインであるため、これからもずっと使われていくのかもしれません。

ソール・バスのデザイン。左からコーセー(1959年)、紀文食品(1964年)、Warner Communications(1972年)

左からソール・バスのデザインしたGirl Scoutsのオリジナル・ロゴ(1978年)、OCD Agencyによってマイナーチェンジされたバージョン(2010年)

ソール・バスのGeffen Records (1980)のロゴデザイン

ロゴデザイナーのウィリアム・ヘイグは、コンチネンタル航空のロゴデザインでソール・バスと仕事をした時のことを回顧し、彼の呼ぶところの「信頼性に基づいたロゴデザイン」を初めて体現したものだったと言っています。ヘイグは、次のように語っています。

私は1500のスライドを持っていきました。夜遅いミーティングで、私とソールは、コンチネンタルの外観がどのような意味をもつのか、新しいビジュアルを作成する段階として、我々が新しいロゴデザインで表現できるものは何なのかを話し合っていました。その時ソールがこんなことを言ったんです。「もしこれがウェスタン航空だったら、カウボーイの衣装を連想させるような“ウェスタンな外観”を利用して“ウェスタン”らしく見えるロゴを作ればいいだろう」って。でもそれは、当時高いサービスレベルが売りのコンチネンタルだったんです。

ソール・バスの有名なコンチネンタル航空“jetstream”のロゴ(1968年)

このロゴ自体は、他のソール・バスの制作物とともに1991年に変更されてしまいましたが、この独特なデザインは、グラフィック・デザインの歴史の中で生き続けることでしょう。

あなたはどのデザインが好きですか?

 

[ 翻訳:shunichi shiga ]