ポール・ランドに学ぶ驚きの4原則

shunichi shiga

ソール・バス、ミルトン・グレイザーとポール・ランドは、20世紀ロゴデザイン史における聖なる三位一体のようなものです。この3人が携わった世界の名だたる企業のブランディングは、AT&TからIBMまで驚異的な数に上ります。

3人の中で最年長のランドが最大の影響力を持っていたのは、ほぼ間違いないでしょう。彼の作品は今日まで人々の感性に刺激を与え続けています。きっとあなたも、驚くような作品に出会えることでしょう。

Direction誌のカバー
ランドが無償で制作したDirection誌のカバー。左:1939年3月、中央:1940年4月、右:1940年12月(ポール・ランド ウェブサイトから)

バスとグレイザーと同様、ランドも世界大戦の最中にニューヨークでユダヤ系移民の子供として生まれました。芸術に傾倒し、3つの機関でデザインを学びましたが、そこから何かを得たとは思えず、彼自身、ずっと独学のデザイナーであると考えていました。

ほどなくして、無償でデザインした雑誌カバーが評価され、彼はロゴデザインの道へ進むことになりました。

初期のロゴ
ランドの初期のロゴ3点。左:Esquire誌、1938年、中央:Wallace Puppets、1938年、右:Coronet Brandy、1941年(ポール・ランド ウェブサイトから)

崇拝していたバウハウスのハンガリー人アーティスト、モホイ=ナジ・ラースローに出会ってから、ランドの成長期が始まります。モホイ=ナジはランドに芸術批評を読んでいるかと尋ねました。ランドが「いいえ」と答えると、モホイ=ナジは「残念だ」と答えたといいます。その時からランドは、できる限り芸術批評や体系論を読むようになりました。

モホイ=ナジの創作理論に追いついた後、ランドは自らの作品について深く考え始めました。ロゴとは何か、ロゴでないものは何か、何がロゴをロゴたらしめるのか。この記事では、彼の偉大なアイデアの数々を4つの主な原則にまとめました。

1. 「ロゴは、それが象徴するもののクオリティから意味を引き出す。それ以上でもそれ以下でもない」

IBMのロゴ
左:IBMのロゴ、1956年、右:8本縞バージョン、1972年(ポール・ランド ウェブサイトから)

デザイナーはロゴについて語る時に、ロゴ自体にその意味を伝える役割があり、ロゴの成功、失敗はそのデザインに要因があると言うことがあります。

ランドは、ロゴにそのような重要性や責任を持たせることは一切ありませんでした。

「製品、サービス、ビジネスあるいは企業と関連づけた時に初めて、ロゴが本当の意味を帯びるのだ。企業が二級なら、ロゴも二級品に見られる。それを見る人々が適切に状況を整える前に、ロゴがただちに仕事をすることを期待するのは無謀である」

ロゴが重要ではないということではなく、ロゴは自由だ、と言っているのです。ロゴの仕事は標識であって、意味を発揮することではありません。これは2番目の原則にもつながります。

2. 「ロゴデザインの必須条件は、区別しやすいこと、記憶に残ること、明確なことだけだ」

Westinghouseのロゴ
Westinghouseのロゴ、1960年

言い換えれば、ロゴはどのような見た目でも構わないということです。代表する企業に関するものを直接的に描写する必要はありません。実際、そうしないほうが良いこともあります。

ランドはこう言っています。

「信じられないかもしれないが、ロゴの主題はほとんど重要ではない。内容の妥当性すら、大した役割を持たないこともある」

「妥当性の希求が望ましくないのではない。シンボルとシンボル化されたものの間に1対1の関係性を持たせることが多くの場合非常に難しく、ある条件においては反感を持たれる、と言っているのである。つまるところ、ロゴデザインの必須条件は、区別しやすいこと、記憶に残ること、明確なことだけだ」

3. プレゼンテーションがカギ

ABCのロゴ
ABCのロゴ、1962年

ランドはクライアントにデザインをプレゼンテーションすることに非常に重きを置いていました。デザインそれぞれについて、デザイナーはクライアントのためにあつらえた唯一の物語を語らねばなりません。

「新しいアイデアをどのように提示するかというのは、多分、デザイナーにとって最も難しいタスクのひとつだ。デザイナーの仕事のすべてにある種のプレゼンテーションが含まれる。あるデザインを、それに関心を持つ聞き手(クライアント、読者、傍聴者)にどのように説明するか(プレゼンテーションするか)だけでなく、マーケットにおいてそのデザインがいかに自身を説明し得るか…」

4. 「シンプルさはゴールではない。それは良いアイデアと適切な目算の副産物である」

ロゴとは何か、ロゴにできないことは何かを本当に理解しているなら、あなたのデザインは誰もが賞讃するシンプルさを備えることになるでしょう。

次のロゴは、ランドがこの点において成功している良い例です。

IBMの絵文字ポスター
IBMの絵文字ポスター、1970年
Yale University Pressのロゴ
Yale University Pressのロゴ、1985年
NeXT Computerのロゴ
スティーブ・ジョブズのNeXT Computerのロゴ、1986年
フォードのロゴのリニューアルデザイン
フォードのロゴのリニューアルデザイン、1966年。これは使用されなかった。
UPSのロゴ
UPSのロゴ、1961年
Borzoi Booksのロゴ
Borzoi Booksのロゴ、1945年
エンロンのロゴ
エンロンのロゴ、1996年

「ロゴデザインの聖三位一体」(ランド、バス、グレイザー)の中で誰が好きですか?

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ユートピアを目指したデ・ステイル造形運動のビジュアル付き歴史概要

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デ・ステイル(De Stijl:オランダ語で「スタイル」の意味)は第一次世界大戦の混沌の中、「秩序への回帰」を掲げて生まれた芸術活動の一つです。 ドイツの芸術家ピエト・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフが中心となり興ったデ・ステイルは、戦前の芸術の装飾的な傾向(アール・ヌーヴォーを思い浮かべて下さい)を否定し、あらゆる対象を幾何学的形式で描くキュビズムを、新たな芸術の性質として提唱しました。最も基本的なデザイン要素である垂直、平行の直線や、原色のみで表現する完全な抽象芸術を目指していました。 デ・ステイルの造形理念は芸術美を持ちながらも社会に大きく影響しました。芸術家自身の個性を表面上から取り除き、精密さや全体的な調和を求めることによって、デ・ステイル派は未来のユートピアへの基盤を築けると考えていました。 全体主義を理念とするデ・ステイルは、社会を立て直すために、いわゆる「高級芸術」や「応用美術(グラフィックや製品のデザインなど)」、そして「建築美術」を区別している間違った定義を撤廃しようとしました。 デ・ステイルは絵画だけでなくデザインや建築の分野にもその性質が反映されています もちろん、現代のロゴやウェブサイトのデザイン分野でも、この性質が見られます(ある意味では、モンドリアンこそがWindowsの初めてのデザイナーと言えるかもしれません)。 デ・ステイルな作品に目を向けると、それらの特徴はすべて、現代のデザイナーが扱い、称賛しているものだということが分かります。ミニマルな単純性や緊張感の表現、対象物と余白スペースのバランス、グリッド(格子状のデザイン)などです。 Microsoftに用いられたグリッドには、デ・ステイルの芸術美の影響が感じられます 英国のデザイン雑誌『Eye』に掲載されたエッセイで著者ジェシカ・ヘルファンドは、デ・ステイルこそ現代のデザイナーが持つプロ特有の危機感に対する答えだと訴えています。それについて言及した部分を抜粋しました。 ― さまざまなものが電子化した現代の環境の中では対人交流が共存し発達しているために、(もし完全に廃れていないと考えるなら)デザインの機能は社会の主流から取り残されていると考える人もいるかもしれない。あるいは、デザイナー自身の役目が消えかけているとも感じるだろうか。おそらく私たちは無意識のうちに、その支配権をコンピュータや作品を見る人、新しいものを求める欲、成長するグローバル社会に委ねてしまったのだ。― しかし、著者はその状況に対する解決策も提示しています。 ― 現代デザイナーにできること、取り組むべきことの核心は、精密さを明確にし、称賛するということだ。それを活用することでデザイナーの役割はより具体化されると同時に重要さを増し、新たなビジュアル定義を構築する者としての使命が再び明確になるだろう。 スクリーン上でクリエイティブな表現を形とすることに苦心しているなら、デ・ステイルの芸術家たちのように、自分の作品を限られた直線的な要素を用いて訴えてみてもよい。私たちは現代のサイバースペースが生み出す無限に広がる空間で、デ・ステイルの直線で示す魅力を伝えることができるのだから。― まだまだ語るべき内容はあるのですが、デザインの歴史に関しては、おそらくビジュアルで順に追っていくのが最良でしょう。そこで、デ・ステイルの想像力豊かな作品や、デ・ステイルにインスパイアされたデザインを用意してみました。 雑誌『デ・ステイル』1号、2号の表紙 映画『インセプション』のオマージュポスター。デ・ステイルの表紙にインスパイアされたデザインです。 テオ・ファン・ドゥースブルフとリチャード・ケグラーのデ・ステイル書体。四角形のジオメトリックなコンセプトが土台となっています。 アムステルダム市立美術館の新しいロゴはとてもミニマルに仕上がっています。完全なデ・ステイルではなく、根本的なデ・ステイルの要素がいくつか含まれています。 こちらの2つもデ・ステイルにインスパイアされたロゴです。建築家ハリス・アームストロングのロゴ、アップルの改訂版ロゴ。 改装したモンドリアンのスタジオ デ・ステイル展示会のポスター デ・ステイルにインスパイアされた3Dデザイン 別の展示会ポスターと、その展示会グッズ オルタナティブ・ロックバンド『ザ・ホワイト・ストライプス』のデ・ステイルを取り入れたアルバムジャケット。アルバムタイトルにも起用しています。 米国オークション会社eBayのロゴデザインを募集した99designsのコンペで、Ruiz Nala wi Garengが提出した作品には目を奪われました。斜線が多いため、デ・ステイルにはなりきっていないものの、色使いや黒のラインがデ・ステイルな印象を与えます。 いかがでしたか?デ・ステイルは現代デザイナーが持つ問いへの答えだと思いますか?最近、デ・ステイルなデザインを見かけたなら、ぜひコメントをしてシェアしてください! アイキャッチ画像:Theo van Doesburg 『Composition Ⅶ(the three graces)』(Wikipediaより)[ 翻訳:shunichi shiga ]

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