有名な建築物から学ぶ10のデザイン原則

Alex Bigman

デザイナーにとって、自分の専門外の分野から受けたインスピレーションは、時としてプラスに作用します。例えば、近現代建築の世界で生み出された目を見張るような建築物は、人間の創造力や美意識の証しであり、じっくり見る価値があると断言できます。

この記事では、(現代に重点を置いて)過去150年間における非常に有名な建築物の情報を集め、特徴に応じて10個のデザイン原則に分類しています。実際に、あらゆるクリエイティブな活動に生かせる内容なので、ぜひ読んでみてください。

1. 技術を試す

19世紀半ばに鋼の画期的な精錬法が発明され、これによってかつて石積みを基本に作られていた建築物は、過去最高の高さに達します。1854年に再建されたSir Joseph Paxton設計の水晶宮は、全体が鉄骨とガラスでできており、新たな可能性を祝うように堂々とそびえ立っていました。その流れに乗ったのがエッフェル塔で、1889年に324メートルという高さで世界一高い建築物になります。

もちろん、今ではエッフェル塔の記録も抜かれています。最近ではAdrian Smithが設計したドバイのブルジュ・ハリファが、地上828メートルという驚きの高さを誇っています。

水晶宮、ロンドン

水晶宮、ロンドン (Sir Joseph Paxton)

エッフェル塔、パリ

エッフェル塔、パリ (Gustave Eiffel)

ブルジュ・ハリファ、ドバイ

ブルジュ・ハリファ、ドバイ (Adrian Smith)

2. ルールを曲げる

超高層ビルは垂直なもの。そんな概念を覆したのはRem Koolhaas率いる建築会社のOMAです。彼らが北京に建設したのは、中国中央電視台本部ビルでした。この斬新な建物は、環状に連なる6つのパーツから成り、そのうちの3つは水平になっています。こんなビルがあっても、いいですよね。

中国中央電視台本部ビル、北京

中国中央電視台本部ビル、北京(OMA)

3. 自らの理念を貫く

モダニズムと言えば、人を楽しませる建物よりも、知的で完全な建物を生み出すことで有名です。 1919年から1933年まで開校していたドイツのバウハウスという学校では、ミニマリズムと機能性重視という原則を非常に重視していました。彼らはどんな反発を受けようと、この原則を守り続けたのです。

1958年に完成したLudwig Mies van der Rohe設計のマンハッタンのシーグラム・ビルディングは、国際様式の見本と言われています。そこからわずか20ブロック先の住宅地には、コンクリートを積み上げたようなMarcel Breuer設計のホイットニー美術館があります。この建物は、オシャレなマディソン街の住民を50年間刺激し続けてきました。(けれども来年この美術館は、窓が多い新しい建物に移転する予定です)。

シーグラム・ビルディング、ニューヨーク市

シーグラム・ビルディング、ニューヨーク市 (Ludwig Mies van der Rohe)

ホイットニー美術館、ニューヨーク市 (Marcel Breuer)

ホイットニー美術館、ニューヨーク市 (Marcel Breuer)

4. コンセプトをスケッチする

建築は、数学と工学に基づき、真に合理的なアートであり、そこに美学が入り込む余地はない、と誤解されることがあります。これは場合によっては正しいのですが、反証する建築家もいます。それは、彼らのスケッチを見れば明らかです。

イラク出身の英国人建築家であるZaha Hadidは、形に強いこだわりを持っています。ローマにあるイタリア国立21世紀美術館(MAXXI)のように、彼女の建築物の大半は、抽象的なスケッチ(下の画像の左上)や絵(下の画像の中央)から生まれたものです。

一方、Lebbeus Woodsは、ほとんど建物を作っていないことで有名です。”建築理論家”である彼の作品の大半は素晴らしい絵なのです。現実的に建築不可能とまでは言いませんが、非常に実現困難なものはいくつかあります。

しかし彼は、晩年に自らのアイデアの1つを具現化しました。それがLight Pavilionと呼ばれる”実験空間”で、これは成都市のオフィスビルの中に見事に埋め込まれています。

イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)、ローマ

イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)、ローマ (Zaha Hadid)

Light Pavilion、成都市

Light Pavilion、成都市 (Lebbeus Woods)

5. 問題を解決する

独創性に富んだ人々は、問題解決という視点でデザインに向き合うことが多くあります。これは革新的なドイツの企業UNStudioについても当てはまります。ブリュッセル空港の連絡通路を建設する上で、彼らに課せられたのは次の4つの課題でした。1) 3つの建物を自然に連結する、2) 利用客の移動や操業プロセス、セキュリティプロセスに適応できる造りにする、3) 商用スペースを新たに設ける、4) ヨーロッパの交通の要になるというブリュッセルの大志を具現化する。実際、彼らの素晴らしいデザインは、これ以上のことを成し遂げています。

ブリュッセル空港の連絡通路、ブリュッセル

ブリュッセル空港の連絡通路、ブリュッセル (UNStudio)

6. 注目を集める

最近は、”象徴的”という言葉がぞんざいに使われていますが、本当にこの言葉にふさわしい建築物もたくさんあります。特に近年は独特な外観のビルが、都市や地域全体のシンボルになっています。例えばシドニー・オペラハウスは、シドニー市における事実上のロゴと言えるでしょう。国際的なコンペで、名だたる建築会社の提案の中から選ばれたのは、当時ほとんど無名だったデンマーク人の建築家Jørn Utzonの生き生きとしたデザインでした。また、1688設立のロンドンの保険市場Lloyd’sのために、Richard Rogersが設計した建物は、Lloyd’sの歴代のビルの中で最も不思議で未来的な雰囲気がある建物の1つです。反対意見もありますが、記憶に焼き付くデザインであることに間違いはありません。

シドニー・オペラハウス、シドニー

シドニー・オペラハウス、シドニー (Jørn Utzon)

Lloyd’s、ロンドン

Lloyd’s、ロンドン (Richard Rogers)

7. 趣を変える

芸術家は一度選んだスタイルを貫かなくてはいけない。そんなルールはありません。刺激的で創造的な思考の持ち主の中には、急激な路線変更をする人もいます。その最たる例がFrank Gehryでしょう。

彼は近年、ビルバオ・グッゲンハイム美術館のような、フランボワイヤン様式の絵画的な建物で、その業績を知られるようになりました。しかし彼の初期の作品の多くは、全く趣が違います。例えば、仲間の建築家たちから愛されたDanziger Studioは、決して目を引く建物とは言えません。

実際のところ、この建物は人目に付かないように、そしてロサンゼルスの古臭さが残る地域に溶け込むように設計されています。ロサンゼルスのスモッグがかかった時の色を想定して、あえてくすんだグレーで塗装されているのです。

Danziger Studio、ロサンゼルス

Danziger Studio、ロサンゼルス (Frank Gehry)

ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ビルバオ

ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ビルバオ (Frank Gehry)

8. 環境を考慮する

この原則は非常にシンプルです。とりわけ建築物は常に既存の環境に入り込み、エネルギーを消費することで環境に影響を及ぼします。過去1世紀の間に建てられた優れた建築物の中には、こうした懸念を前面に出したものもあります。その1つが、Frank Lloyd Wrightの最高傑作である落水荘です。1935年に建てられたこの建物は、下を流れる滝など、周囲の環境を破壊することなく丘の建てられた田舎家です。Renzo Pianoが設計したサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークにあるカリフォルニア科学アカデミーは、”生きている屋根”で有名です。本物の緑で覆われた屋根は、建物の二酸化炭素排出量の削減に役立っています。

落水荘、ペンシルバニア

落水荘、ペンシルバニア (Frank Lloyd Wright)

カリフォルニア科学アカデミー、サンフランシスコ

カリフォルニア科学アカデミー、サンフランシスコ (Renzo Piano)

9. 再利用する

この記事の最後の2つのセクションでは、単純に古い建物を壊して建て直す代わりに、譲渡された場所を大変身させた例を紹介しましょう。ニューヨーク市にあるハイラインパークは、既存の建物を再利用した素晴らしい事例です。

わずか数年前まで、そこは廃線になった鉄道路線で、雑草や低木が生い茂り、取り壊しが予定されていました(以下の写真の上の方)。それが建築会社や景観設計会社の協力によって、大人気の地上公園へと姿を変えたのです(以下の写真の下の方)。

これと同様に、商用運送用コンテナを再利用して、住宅やアパート用の建物にした見事な事例もあります。

ハイライン、ニューヨーク市

ハイライン、ニューヨーク市 (Diller Scofidio + Renfro)

輸送用コンテナ住宅、チリ

輸送用コンテナ住宅、チリ (Sebastián Irarrázaval)

10. 新旧を融合する

ブランディングに携わった経験のある人なら、新しいものを生み出す際に、以前の体系とつながりを持たせ、場合によっては共存すら可能にするという課題に何度も直面してきたことでしょう。建築の分野において、この課題は非常に難しい挑戦になります。

Hearst Corporationの望みは、マンハッタンの中心部に超高層ビルを建設すること、そして古い建物の美しく歴史あるファサードを保持することでした。建設会社のFoster + Partnersは、その両方を実現すると約束しました。彼らは古い建物のファサードを残しつつ、内部を取り壊し、その中心に光り輝く新しいタワーを大胆に乗せたのです。

同様の課題に挑んだのは、アムステルダム市立美術館です。彼らは現代作品を増やすために、おしゃれでモダンなウィングを増築し、それを華美な16世紀の様式で19世紀に建てられた既存の建物と連結させようと考えていました。建築会社が出した解決策には、さまざまな反応が寄せられました。ただ1つ確かなのは、”思い切った選択だった”ということです。

ハースト・タワー、ニューヨーク市

ハースト・タワー、ニューヨーク市 (Foster + Partners)

アムステルダム市立美術館、アムステルダム

アムステルダム市立美術館、アムステルダム (Benthem Crouwel)

どの有名建築物に刺激を受けたか、コメントをして教えてください

[ 翻訳:shunichi shiga ]

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ユートピアを目指したデ・ステイル造形運動のビジュアル付き歴史概要

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デ・ステイル(De Stijl:オランダ語で「スタイル」の意味)は第一次世界大戦の混沌の中、「秩序への回帰」を掲げて生まれた芸術活動の一つです。 ドイツの芸術家ピエト・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフが中心となり興ったデ・ステイルは、戦前の芸術の装飾的な傾向(アール・ヌーヴォーを思い浮かべて下さい)を否定し、あらゆる対象を幾何学的形式で描くキュビズムを、新たな芸術の性質として提唱しました。最も基本的なデザイン要素である垂直、平行の直線や、原色のみで表現する完全な抽象芸術を目指していました。 デ・ステイルの造形理念は芸術美を持ちながらも社会に大きく影響しました。芸術家自身の個性を表面上から取り除き、精密さや全体的な調和を求めることによって、デ・ステイル派は未来のユートピアへの基盤を築けると考えていました。 全体主義を理念とするデ・ステイルは、社会を立て直すために、いわゆる「高級芸術」や「応用美術(グラフィックや製品のデザインなど)」、そして「建築美術」を区別している間違った定義を撤廃しようとしました。 デ・ステイルは絵画だけでなくデザインや建築の分野にもその性質が反映されています もちろん、現代のロゴやウェブサイトのデザイン分野でも、この性質が見られます(ある意味では、モンドリアンこそがWindowsの初めてのデザイナーと言えるかもしれません)。 デ・ステイルな作品に目を向けると、それらの特徴はすべて、現代のデザイナーが扱い、称賛しているものだということが分かります。ミニマルな単純性や緊張感の表現、対象物と余白スペースのバランス、グリッド(格子状のデザイン)などです。 Microsoftに用いられたグリッドには、デ・ステイルの芸術美の影響が感じられます 英国のデザイン雑誌『Eye』に掲載されたエッセイで著者ジェシカ・ヘルファンドは、デ・ステイルこそ現代のデザイナーが持つプロ特有の危機感に対する答えだと訴えています。それについて言及した部分を抜粋しました。 ― さまざまなものが電子化した現代の環境の中では対人交流が共存し発達しているために、(もし完全に廃れていないと考えるなら)デザインの機能は社会の主流から取り残されていると考える人もいるかもしれない。あるいは、デザイナー自身の役目が消えかけているとも感じるだろうか。おそらく私たちは無意識のうちに、その支配権をコンピュータや作品を見る人、新しいものを求める欲、成長するグローバル社会に委ねてしまったのだ。― しかし、著者はその状況に対する解決策も提示しています。 ― 現代デザイナーにできること、取り組むべきことの核心は、精密さを明確にし、称賛するということだ。それを活用することでデザイナーの役割はより具体化されると同時に重要さを増し、新たなビジュアル定義を構築する者としての使命が再び明確になるだろう。 スクリーン上でクリエイティブな表現を形とすることに苦心しているなら、デ・ステイルの芸術家たちのように、自分の作品を限られた直線的な要素を用いて訴えてみてもよい。私たちは現代のサイバースペースが生み出す無限に広がる空間で、デ・ステイルの直線で示す魅力を伝えることができるのだから。― まだまだ語るべき内容はあるのですが、デザインの歴史に関しては、おそらくビジュアルで順に追っていくのが最良でしょう。そこで、デ・ステイルの想像力豊かな作品や、デ・ステイルにインスパイアされたデザインを用意してみました。 雑誌『デ・ステイル』1号、2号の表紙 映画『インセプション』のオマージュポスター。デ・ステイルの表紙にインスパイアされたデザインです。 テオ・ファン・ドゥースブルフとリチャード・ケグラーのデ・ステイル書体。四角形のジオメトリックなコンセプトが土台となっています。 アムステルダム市立美術館の新しいロゴはとてもミニマルに仕上がっています。完全なデ・ステイルではなく、根本的なデ・ステイルの要素がいくつか含まれています。 こちらの2つもデ・ステイルにインスパイアされたロゴです。建築家ハリス・アームストロングのロゴ、アップルの改訂版ロゴ。 改装したモンドリアンのスタジオ デ・ステイル展示会のポスター デ・ステイルにインスパイアされた3Dデザイン 別の展示会ポスターと、その展示会グッズ オルタナティブ・ロックバンド『ザ・ホワイト・ストライプス』のデ・ステイルを取り入れたアルバムジャケット。アルバムタイトルにも起用しています。 米国オークション会社eBayのロゴデザインを募集した99designsのコンペで、Ruiz Nala wi Garengが提出した作品には目を奪われました。斜線が多いため、デ・ステイルにはなりきっていないものの、色使いや黒のラインがデ・ステイルな印象を与えます。 いかがでしたか?デ・ステイルは現代デザイナーが持つ問いへの答えだと思いますか?最近、デ・ステイルなデザインを見かけたなら、ぜひコメントをしてシェアしてください! アイキャッチ画像:Theo van Doesburg 『Composition Ⅶ(the three graces)』(Wikipediaより)[ 翻訳:shunichi shiga ]

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