手書きで書体が作り出された時代から、デジタル技術の波を受けて現在へ、ロゴデザインは素晴らしい進化を遂げ、その形を変えてきました。2015年には、ロゴデザインはどのようなトレンドを見せるのでしょうか?
ここで最新のロゴデザインを基に、10のトレンドを予測してみました。あなたの意見を、ぜひコメントに残してください。
1.ロゴの再定義

Business Card: Ascui & Co (Grosz Co.Lab)
クライアントは、冒険を好まないものです。しばしばクライアントは、理解が得やすいマーケットに合うものを求めます。賭けをすることは、ビジネスにおいて損失につながりかねないからです。恐らくそれが、静的で完結した記号やロゴもしくはその2つの組み合わせという、かなり「型にはまった」ロゴが、最近まで多かった理由でしょう。
その一方で、既成概念の枠を超えるデザイナーたちが常に存在しています。そして時折、彼らの革命的なアイディアが日の目を見ることがあるのです。上の例は、メルボルンを拠点に活躍するデザイン・スタジオGrosz Co.Labの作品で、ロゴデザインについて全く新しい取り組みが行われています。彼らは概念的に、静的な記号を動きのある形式へと展開させたのです。さらに、繰り返しを用いることで記号の一般的な比率を視覚的に拡張し、周辺スペースに広がりを見せる柔軟性を与えています。

Deviant Artの新しいロゴ(上の画像参照)は、ロゴ自体の対称イメージと組み合わされ、パターン性を感じさせます。さらに、ウェブサイトがトレンド・アートにフォーカスしているためか、パターンのネガティブスペースが、(大文字の「A」とともに)上下の矢印を作り出しています。これは、背景に概念的な意味を併せ持つパターンの機能性を備えているという、ロゴの主流を作った初期の作品と言えるかもしれません。これにより、ロゴの定義は確実に拡大されました。
クライアントやデザイナーが、これらの画期的なロゴデザインが定着していくのを目の当たりにするにつれ、デザイン・コミュニティの目をロゴの可能性へと向けさせ、ロゴの定義も拡大してきたのです。
2.書体のカスタマイズ

アナログの時代、活版技術者は非常に熟練した見事な技術を身につけ、美しい書体を造作なく作り出すことができました。そこへ突然、デジタル時代の圧倒的なツールと技術の波が押し寄せ、それは結果的に伝統的な書体の技術にまで及ぶことになります。

多くの人に愛されるヘルベチカのように、かつて手書きで生み出された書体が今日も使われているのには、明らかな理由があります。そのような書体は、基本となる形が大変美しく、理論的に理解しやすく、高度な技術を持ち合わせ、それでいて芸術的なインスピレーションを与えてくれます。
これらのクラシックな技術は、徐々にデジタル時代に追いつきつつあります。デザイナーが書体をカスタマイズすることが、どんどん容易になっているのです。結果として、今年は今までになく多くのカスタマイズされた書体を目にすることになりそうです。
3.ダイナミック・ロゴ(動的なロゴ)とロゴセット

デザイナーやクライアントは常に、より良いロゴを作りだす道を探っています。毎年、365日同じロゴを目にしていれば、どんなに素晴らしいデザインであっても新鮮さを失ってしまうものです。そんな倦怠感を打ち破るために生み出されたのが、ダイナミック・ロゴ(「ダイナミック・アイデンティティ」とも呼ばれる)です。Googleの日替わりに表示されるロゴが有名ですね。
現在、かつてないほどロゴセットがロゴに命と鮮度を吹き込むシーンが到来しています。上の例は、トロントを拠点とするデザイン・スタジオBlokの作品です。Blokは、会社名であるCeeをもじってコンセプチュアルなドアを開け、カラフルなロゴをエンドレスに繰り返しています。

ロゴを新鮮に保つことだけが、ロゴセットの意義ではありません。グラフィック・デザインへのニーズに対するクライアント全体の理解が、日に日に深まっているのです。その副産物として、ロゴデザインと、それを1つのブランド全般に適用することの概念的なギャップが埋まってきているのです。デザイナーは今や、1つのビジュアル的に強いロゴにフォーカスするのではなく、ロゴが1つのブランドの中で全般的にどのように機能するかを考えなくてはならなくなっているのです。
スウェーデンを拠点とするデザイン・スタジオBedowの上の例では、Hotel Kosterのロゴセットが、ホテルの3つの異なる側面を表現するために使われています。

出版社であるPenguinとRandom Houseの合併に伴い誕生したロゴセットは、また新しい例を見せてくれます。Pentagramのマイケル・ビアラットは、2社がこれまでに発行した250の刻印すべてに適応できる3行のロゴタイプを制作しました。
これは概念的な意味ではかなりユニークなケースですが、近い将来、ダイナミック・ロゴとロゴセットがより広く受け入れられる前兆と言えるかもしれません。最後にちょっとしたお楽しみです。スティーヴン・コルベアが『USA Today』の新しいダイナミック・ロゴを切り捨てる動画をご覧ください。
ダイナミック・ロゴとロゴセットの作品例はこちらから。
4.シンプルで飾り立てていないロゴ


今は、誠実であることがとても大切な時代です。顧客は企業に、同意・共感できるパーソナリティを求めています。クリエイティブなレスポンスも、現実的で手作り感のある、基本のシンプルなデザインの傾向が見られたとしても不思議ではありません。
上に挙げたBedowの2つの作品では、アナログな表現手法により人間味を感じることができ、企業と目と目を合わせているような気持にさせてくれます。
5.ワードマークにフォーカスをあてたロゴ

ロゴは永久的に存在し、さらに新しい企業が生まれ、既存企業がリブランディングを行う度にその数を増やし続けています。このため、ビジュアルの刺激が嵐のように押し寄せ、顧客が伝統的なマークと個々の企業を結びつけることが難しくなりつつあります。
結果としてデザイナーは、ワードマーク(文字によるマーク、またはロゴタイプ)に、これまでよりもフォーカスを当てることになりそうです。ワードマークはそれだけで完結しており、独立し、ブランドの認知度を上げ、そしてこれから先の長い年月も自力で生き延びていく力を持っているのです。
6.小文字は引き続き健在

大文字のロゴは、いつの時代もマジョリティを占めてきました。時には、小文字の書体を含むロゴは、大文字だけのロゴに比べると知覚されにくいとすら言われます。これは小文字が持つ非形式的で遊び心のある性質のためかもしれません。

しかし最近、デザイナーは、フレンドリーでありながらプロフェッショナルであり得る小文字の活用方法を見つけ始めています。1つの有名な例がWalmartのリブランディングで、新しいタイトル・ロゴは、企業により親しみやすいイメージを与えることに成功しています。多くのデザイナーがこのトレンドを盛り上げています。上のデザイン・スタジオBuildやGhostの例をチェックしてみましょう。
7.カラーのスポット使いと印刷媒体への理解


デザインの世界がデジタル化を続ける中で、クライアントにオンラインでデザインを提出するための必要条件はどんどん少なくなっています。クライアントやコンペにオンラインでブランド・デザインを提出するのに、印刷機械や色彩理論についての知識も必要なければ、自分のパントン色見本帳を持つ必要もありません。ここ何年も、カラフルなグラデーションを使ったロゴを作るデジタル・デザイナーが多かったのはそのためでしょう。
しかし2015年現在、必要に迫られたロゴ・デザイナーが、再び印刷に関する知識を身につけるにつれ、その必要性が実感されつつあります。彼らは、印刷物のほうが、カラーのスポット使いはビジュアル的により強い場合も多いことや、プロセス・カラーよりもコストダウンにつながることに気づくことでしょう。結果として、今年はソリッド・カラー(ベタ)または、限られた色を用いた作品が多く見られると予測されます。
8.コンセプトの洗練化

ロゴデザインの制作はもはや、かつてのように特権階級だけの芸術領域ではなくなりました。一般的にロゴの制作が、多種多様なレベルの層に発注されるようになり、その結果としてGapやUCのリブランディングのケースのように、新しいロゴの使用が中止される事態に陥ることもしばしば出てきています。
そのため、特にコンセプトのレベルにおいて、ロゴが意味を成すことをデザイナーは求められ始めています。2015年は、シンプルで簡潔なコンセプトをもつロゴを多く目にすることになりそうです。
9.ステンシル体と不完全なデザイン


ロゴの世界で、ステンシル体を再び流行させるきっかけになったものは何だったのでしょうか。そもそもこの書体の切り方は、ステンシルがバラバラになるのを防ぐためのものでした。しかしブランド製品において、これは実は問題ではなかったのです。
この技術的には実用的でないステンシルの書体が用いられるのは、恐らくその本質によるものでしょう。ステンシルは実用的であり、手軽で使いやすく、技術面でも印刷向きです。この性質は、ロゴ・デザイナーとして心に留めておくべきものでしょう。ステンシル書体が、これらの性質を魔法のように引き出す効果的な表現手段であることを、デザイナーたちは認識しているようです。
10.機能しているものは、さらに活発に

予測の最後に確実に言えることは、2015年は、現在のデザインを築いている継続中のトレンドは、より盛り上がりを見せるだろうということです。クラシックなスタイルも、モダンなスタイル(ネガティブスペースを活用したものやヴィンテージスタイルのロゴ、フラットデザイン、そして最も大切なクリエイティビティが発揮されたもの!)も見られるでしょう。
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